最近、通勤途中や仕事中に、気分転換のために事務所のある名古屋市北区水切町近辺を散策しています。狭い路地や長屋が残る、下町情緒豊かな街の風情に誘われて、毎度楽しく自転車のペダルを漕いでいます。
この場所へは四方から道が通じるものの、それらは全て幅2メートル程しかありません。もちろん自動車は入っていけません。まさしく陸の孤島の様な隔絶された雰囲気が漂っていて、周囲の木造住宅といい、まるで映画のセットの様な空間です。
普段の私は、住まう人のプライバシーを守るようにして、街区に対して閉じた空間を設計する事が多いのですが、ここでは各住戸が、まるで一つの部屋のようにして街区に放り出されている様に感じます。この路地は、現代の無機質的な道路ではなく、濃密な時間が流れる居住空間の延長ではないでしょうか。ただ住民の高齢化とともに、その空間の密度が徐々に薄まりつつありますが。
きっとお隣さん同士の濃密なお付合いを忘れてしまった私たちには、棲む事ができない世界なのではないか。しかし、そんなギャップに、益々惹き付けられてしまいます。