前回に続く軽井沢ネタNo.2は、「吉村順三」(1908-1997)設計による「脇田邸」です。彼は、前回UPした「アントニン・レーモンド」に師事した建築家で、モダニズムを学び、先端技術を採用したオフィスビルを手がける一方で、日本の木造建築の要素を採入れた心安らぐ作品も数多く残しています。ちなみに1962年竣工のNCRビル(東京都)において、ダブルスキンのカーテンウォールを日本で初めて採用したのは彼で、その先見性には驚くばかりです。
この建築は、画家であった脇田和のアトリエ兼住宅で、RC造の1階部分から跳ね出すように木造の居室が載せられている構成は、設計者自身の「軽井沢山荘」と同じスタイル。しかし、軽井沢山荘と比べ、水平方向に拡がりを持っており、さらに庭を囲むように折れ曲がっているプランが特徴です。また居住空間を地面から浮かせているのは、地表面に滞留する湿気を避けるためですが、こちらは一部ピロティを用いているのも、軽井沢山荘との相違点です。
軽井沢の空気を肌で感じる事が出来る、ピロティの半屋外空間に身を委ねてみると、単なる目新しさや、機能性だけでは語れない、吉村順三の建築に対するメッセージが聞こえてくるようです。場所の特徴を生かした魅力ある設計手法から、大いに刺激を受けました。
現在はこの敷地内に、大手ゼネコンの設計施工による「脇田美術館」(1991)が、この「脇田邸」を取り囲むように建てられているのですが、そのボリュームが大きく、さらに近接している為に、この建物の魅力がスポイルされている様に感じました。少々残念な点です。