今回の軽井沢旅行で一番印象に残った建築が、ケンドリック・ケロッグ設計による「石の教会 内村鑑三記念堂」でした。まるで戦時中の遺構を思わせるような、ゴツゴツとしたコンクリートアーチの架かる礼拝堂で、その地下には基督教思想家「内村鑑三」の記念館があります。
現在のコンクリート打ち放しのイメージとは程遠い、力強いコンクリートのアーチはあまりに武骨で、その重厚さ、存在感に驚かされます。しかしながら、基壇部分に積まれた石とともに風雪にさらされた表情からは、自然の中に溶け込みそうな不思議な素朴さも感じます。
この連続するアーチの隙間にはガラスが嵌め込まれていて、そこから礼拝堂に差込む光の美しさ、神々しさに思わず言葉を失ってしまいます。この武骨なコンクリートのアーチは男性を、隙間から木漏れ日のように差込む光は女性を表現したモノだそうです。
メキシコで活躍した、コンクリートのシェルとその隙間から差込む光を非常に上手く扱うフェリックス・キャンデラという建築家がいます。学生の頃から大好きな建築家の一人で、彼の設計した教会を、私は写真集の中でしか見た事がないのですが、この石の教会の内部空間に立って、その作品を疑似体験したかのように錯覚してしまいました。コンクリートや石でできた洞穴のような空間に溢れる光の粒子。十字架は無くとも、そこは紛れも無い祈りの場として成立しているという事実に、ただただ感動せざるを得ませんでした。
教会と言う事で内部は撮影禁止。ホームページに美しい写真があるので、是非ごらんください。