先日、埼玉県立大学等の設計で知られる「山本理顕」氏(1945年生)設計の「横須賀美術館」へ行ってきました。私は、山本氏の建築に対して中心性や対称性を回避した、脱権威主義的なものを感じています。
ここでも、タイル張りや石張りの、いかにも美術館ですよというような顔をした従来の美術館にありがちな、厳かな或いは近づき難い雰囲気は微塵も感じさせません。大げさな門やエントランスの類いも一切ありません。何処がメインエントランスが分かりづらい程です。
さて潮風が吹き付ける敷地に建つ建築の外壁として山本氏が選択したのは、何とガラス・・・。塩害によって腐食しないガラスの方が、永年に渡りこの敷地に建ち続ける事を義務づけられた美術館の外壁として、メリットが多いかもしれません。
そしてガラスの箱の中に、角の取れた白いボリュームを入れ込んだダブルスキンとなっているのがこの建物の特徴。シャープな庇やフレームの外皮(ガラスの箱)と、お饅頭のような柔らかい内被(白いボリューム)の組合せが、どことなく愛嬌も感じさせます。
ダブルスキンですから、夏の強い日差しに対しても、美術館内の空調を理想的な状態に保ち易くなっているはずです。
ちなみにエントランスの方から振り返るとこんな感じ・・・
東京湾越しに房総半島まで見渡せる絶好のロケーションです。
内に入るとご覧の通り。白い内被に穿たれた丸い開口部から、柔らかい光が差込んでいます。こういう可愛らしいデザインからも、従来の直線的で平面的な美術館との差異を感じますね。
本館の展示室を一通り見終わった後は、浦賀水道を見渡すレストラン「アクアマーレ」にてランチ。広尾に「アクアパッツァ」というレストランを構える、日高良実氏がプロデュースした人気のレストランですので要予約です。地元の素材を生かした美味しいランチでした。
食後は別館の「谷内六郎館」を見学。長きにわたり週刊新潮の表紙絵を描き続けた谷内氏の作品は、どれも思わず微笑みを誘うものばかり。こちらも必見です。
風は強いけれど透き通った青空が気持ちの良い、秋の休日を満喫できました。