再びガウディの作品、バルセロナのグラシア通りに建つ「カサ・バトリョ」をご紹介します。繊維業を営んでいたジュゼップ・バッリョ・イ・カザノバスの依頼を受けたガウディが改築を設計した建築物で、完成は1906年ですからもう既に100年の歳月が過ぎているんですね。他の作品とともに世界遺産に登録されていますが、1世紀以上の歳月を耐えて世界中から人々を惹き付ける・・・ガウディの仕事には感服です。
その芸術的な装飾を見れば彼の圧倒的な個性を感じ取る事ができるですが、各部屋に光を均等に届けるべく生み出されたトップライトと光庭、上げ下げ式の窓や無双窓の様なガラリ等、100年以上の前の建築とは思えない数々の技術面での発想にも驚かされます。見るべきポイントは数多くありますが・・・
私が一番驚かされるのは、グラシア通り沿いの二階にレイアウトされた広間の窓。大きく三つの部分に区別する事ができます。上から嵌め殺しのステンドグラス、そして比較的大きなガラスの嵌まったサッシ部分、水泡の様な形をした丸い窓とガラリを納めた腰壁部分。驚きなのは前後そして上下複雑に捩れたこの木製サッシの、中央部分がワイヤーによって上に釣り上げられる様になっている事です。
四角い平面のフラットなサッシならまだしも、百年以上も前に作られた邸宅のファサードとは思えないディディール!!単に外部の景色を切り取るだけでは飽き足らない、建築家の創造性溢れるサッシに埋込まれたギミック!!
ガウディの創造力は、その芸術性のみならず技術的な面にも大いに発揮されていたのです。既製品では無く職人が一つ一つ丹精を込めて作られた、このサッシの仕組みを目で追うだけで充分一時間は過ごせます。
同じ広間の天井を見上げるとご覧の様な渦巻き状の造形が・・・。バトリョ邸を巡っていると感じられるのは、まるで海の底にいるような感覚。この天井の渦巻きや、海の泡を表したかのような壁の模様、深海魚を想起させる装飾的な鉄骨。
そこはまるでジュール・ベルヌの小説、海底二万里の世界。彼の小説が発表されたのは1870年ですから、ガウディがその世界観に影響されていたとしても不思議ではないのですが・・・。バルセロナの面する陽光溢れる地中海からは、海底二万里の様な深遠なる世界は形成され得ないのではないか。だから余計にそんな想像をしてしまうのです。
そしてカサ・バトリョと同じグラシア通りに建つ、もう一つのガウディ建築が「カサ・ミラ」。バトリョ邸と同じく海をそのモチーフにしているしていると思われますが、コチラは海底では無く地中海の寄せては返す波をイメージさせます。ベランダの手摺りはまさに海藻そのもの。
ガウディは自然界のあらゆる生命の形から、建築の構造や意匠のアイデアを導き出しています。例えば太い幹が徐々に細い幹、そして枝へと分岐しながら全体を形成している樹木から構造的な合理性を見いだし、サグラダファミリアの柱に適用したりと言った具合です。
と同時にガウディの建築からは、宮崎駿さんが描くアニメの世界を感じる事があります。もちろん影響を与えたとするならば、1852年生まれのガウディの方なのは明らかですが。ただ、そんな印象を抱くのは私だけではなく何人かの人がブログ等でも書いているので、あながち的外れな推測でもないと思うのです。
きっと自然に学び建築を創り上げたガウディの姿勢や作品に、宮崎駿さんが共感したのでは無いでしょうか。
カサ・ミラの屋上に上がると、そんな推測が確信(?)へと変ります。何本も並んだ換気筒の上端に付いている物体にご注目!!私はこれがナウシカの被っていた兜か帽子の様なモノに見えてしようがありません。
きっと宮崎さんはこのカタルーニャの地にガウディの建築群を訪ね、得られた体験をその作品に生かしたに違いありません。
以上、ガウディも宮崎アニメも好きな人間の戯れ言でした・・・。