本日のネタは、現代カタルーニャを代表する建築家であった「エンリク・ミラージェス」設計の「サンタ・カテリーナ市場再生計画」。なぜ過去形かと言いますと、彼は2000年に45才という若さで亡くなっているからなのです。
ミラージェスが公私のパートナーであるベネデッタ・タグリアブエと共に、この仕事をコンペで獲得したのは1997年のこと。そして竣工したのは2005年の5月ですから、彼は完成したこの市場を見る事なく他界してしまった訳です。プロジェクト自体は奥さんが引き継いだのですが、実に8年もの歳月を掛けて完成したこの市場、一番の特徴は何と言っても大きく複雑にうねった大屋根と、それを彩るカラフルな仕上げでしょう。屋根のスタディだけで3年も掛けただけあって、その抑揚ある屋根の稜線は非常に調和の取れたモノになっています。
しかし、旅行客がその屋根を上から眺める事ができる場所は、残念ながら用意されていません。その特権は近隣のアパートの住民だけに与えられているのですが、写真ならば彼らの事務所(EMBT)のホームページなどで見る事ができます。この曲面と六角形を組合せたカラフルな仕上を見ていると、何となくガウディが用いた手法との関連性も感じらるのですが、この色彩は市場にならぶ野菜や果物を表現しているそうです。これだけの色彩を用いているにも関わらず、刺々しさを感じないのは彼らの卓越した感性と数多くのスタディのお陰でしょう。
またこの屋根は市場の上に掛けられた、芸術的な一枚の布の様にも見えます。そして地中海の都市バルセロナの明るい太陽の下、もっと日常生活を愉しもうじゃないか!そんなメッセージを感じます。だってこの屋根の下には、日々の暮らしを彩る美味しそうな食材がたくさん並んでいるのですから・・・
内部に入ると大屋根のダイナミックさと、構造材でもある木材がもたらす親近感を感じる事ができます。素晴らしいのは、木材と鉄骨が組み合わされたハイブリッド構造である、この大屋根を支えている柱の存在が内部において慎重に消し去られている事です。その操作によって、この大きな屋根が市場全体に覆いかぶさる重たい物質として表れる事を回避し、あくまで一枚のテキスタイルが地面すれすれに漂っているかの様な印象を獲得しています。物体としての屋根の存在感は決して小さくないのに、圧迫感は感じない。メロディーを奏でている楽器の様な屋根がある・・・。そこにはサンタカテリーナ市場に固有の場所性が生まれているのです。
しかし、この市場を訪れた理由はこの建築を見る事だけではありません・・・
サンタ・カテリーナ市場へ行ったもう一つの目的は、市場内にある人気レストラン「Cuines Santa Caterina」。ご覧のとおり広くて開放的な店内ですが、ガイドブックによると昼と夜それぞれ300人以上のお客さんが訪れるそうです。オープン15分位前にお店に着いた時には先客が一組だけでしたが、オープン15分後には既に空席を待つ人達の列ができていました。ディナーはどうか分かりませんがランチは予約不可らしいので、並ぶのが苦手な方は早めにお店の前で待った方が良いかも。
料理はベジタリアン、地中海、オリエンタル、炭火焼きの4つのジャンルから、前菜やメイン、デザート等を好きな様にチョイスするスタイルです。オリエンタルの料理には寿司や焼きそばなんかもあったのですが、せっかくここまで来たのですから、やっぱり地中海ジャンル中心のチョイスになりました。
地元の名物料理が、ちょっと変った調理法や盛りつけで出てくるあたりがこのお店の興味深いところ。味もモチロン、最高です。他のお客さんが食べていた焼きそば・・・美味しそうでした。でも他にも食べたい物があって、全然お腹に余裕はありませんでした。
僕がどうしても食べたかったのが、ガイドブックに載っていたこのミルフィーユ!!美味しそうでしょ?いろんなベリーの実が入っていて、本当に美味しかったです。今思い出しても涎が・・・。