片側2車線の前面道路を走るクルマの騒音から、家族の生活空間として相応しい静寂を守る為、道路側(西面)に対して一枚の壁を立てる事から計画を始めた。その壁の前面にはコンクリート打放しのガレージを、背後には白い箱や庇で縁取ったタイル張りの壁をリズミカルにレイアウトした。
ガレージのコンクリート打放しの壁には、杉板の型枠を用いた。無機質な表情のコンクリートに杉の年輪が転写され、時間の流れを感じる豊かな表情を見せている。
この家を訪れる人は、まず灰色の割栗石を敷き並べた前庭を眺める事になる。川原の様な無機質な地面の只中から一本のアオダモの木が生えている。この対比により樹木の生命力はより強く意識される。また葉が落ち美しい樹形が露となる冬には、また違った趣を愉しめる。
リビングの正面には杉板の打放しの壁を立て、外観との連続性を保っている。両サイドの開口部にはウッドデッキをフラットに納めてウチとソトの境界を曖昧にし、リビングの開放感をより強めている。
上記のような開口部のデザインや自然光を優しく取込む階段上のトップライトなど、ウチに居る時でもソトの空気を身近に感じる仕掛けを至る所に配した。身体的な感覚はより広く拡散してゆき、より深い寛ぎを生み出す。
この住宅では外断熱や太陽光発電、深夜電力による蓄熱式床暖房など、住環境をより快適にし地球環境への負荷を軽減する設備を導入している。
しかしスペックだけを高めて行くだけでは、豊かな住空間を得る事は出来ない。住まう事の本質とは何か。もう一度、自らに問い直しながらの設計となった。
所在地:愛知県名古屋市
主要用途:専用住宅
設計監理:architect6建築事務所
施工:株式会社高垣組
基本計画:2010年10月〜2011年2月
実施計画:2011年4月〜2011年6月
工事期間:2011年6月〜2012年3月
構造:鉄筋コンクリート2階建て
敷地面積:427.33m2( (129.49坪)
建築面積:212.41m2( (64.37坪)
延床面積:173.30m2( (52.52坪)