「平安通の家」の敷地は大通り添いの商業地区と、この地域が農村だった時代の細く曲がりくねった道が残る住宅地の境界にある。既存宅の南側に建っていた納屋等を解体した跡の、間口にたいして奥行きの深い敷地に、細長い平屋住宅を挿入するように建てた。
垂直と水平に伸びる白いスラブと、ベイスギの無垢材を張り巡らした外壁、ベルギーの街なかで使われていた不揃いなピンコロ石。厳選した素材の対比が緊張感をもたらしつつ、それぞれの材料が重ねて来た年月や記憶がこの家のファサードに趣を与えている。
LDKは施主が幼少期に住われていた旧家に対峙する様に配置。新居と旧家の狭間にある庭は、以前から残っていた灯籠やマツの木等を生かしつつ、過去と現在をつなぐ媒体として仕立て直した。
北面に設けた大開口からは日中を通して柔らかい光がふんだんに室内に採り込まれ、落ち着いた印象をもたらしている。
ガラス張りの天井から煌めく自然光が降り注ぐバスルーム。周囲からの視線に晒されることなく、開放的な雰囲気のなかでゆったりと入浴できる。
この平安通の家ではレトロとモダン、その両方が同時に存在する様な空間を創り、これから未来に向けて、住い手の歴史が引き継がれて行くシーンを想像しながら設計を行った。時を経てこの家が、この地に欠かせない景色の一部、歴史の一部として埋め込まれていく事を祈りながら見守って行きたい。
所在地:愛知県名古屋市
主要用途:専用住宅
設計監理:architect6建築事務所
キッチン:プリマヴェーラ
造園:A New Garden
基本計画:2014年6月〜2014年11月
実施計画:2014年11月〜2015年2月
工事期間:2015年5月〜2016年3月
構造:在来木造 平屋建て
敷地面積:271.84m2 (82.37坪)
建築面積:132.77m2 (40.23坪)
延床面積:114.18m2 (34.60坪)