岳見町の家では急傾斜地ならではの眺望を活かすべくLDKを2階にレイアウトするプランを選択した。そのリビングから宙へと跳ね出す2枚のスラブが外観の特徴となっており、先端に取り付けられたH鋼と手摺りを橋梁用の特殊塗装で仕上げ、白いボリュームとコンクリートの壁によるシンプルな構成の外観を引き締めている。
玄関ホールに入ると正面の坪庭に植えた株立ちの木が来客を迎える。2階のLDKへとスケルトン階段を折り返して上る動線を採用し、シンプルな空間構成ながら印象的な体験を与える様に工夫をした。
階段を上がるにつれて広々としたLDKの様子を徐々に窺い知ることができるが、上り切る手前、右手の家具内部にはエタノール暖炉をビルトインし、さらなる驚きを与えている。
リビングは厳しい北側斜線制限の許す限りの高さを確保し、急傾斜地ならではのダイナミックな景観を楽しむことができるよう、コーナーを回り込むように開口部を設計している。
辺りが暗くなる頃には、チーク張りの天井板の四方に仕込んだ間接照明がもたらす柔らかい光で満たされる。
キッチンはプリマヴェーラ製のオーダーキッチンを採用しているが、アイランドカウンターとダイニングテーブルを一体で製作し、IHコンロを組み込んだウォールユニット側の壁面には埋込み型のレンジフードを採用することでスッキリとした印象を得ている。
洗面所では玄関と中庭を共有しており、白い壁を乱反射して下りてくる自然光に満たされる。
またガラスならではの透過性のあるタイルを使用し、優しい雰囲気の空間となっている。
無駄な廊下などを極力省き2階にLDKを配置することで、一種風致地区の厳しい法規制(許容建ぺい率30%)の立地であることを忘れさせるような、伸び伸びとした空間を獲得することができた。急傾斜地というこの敷地ならではの条件を上手く活かすことで生まれた住宅である。
所在地:愛知県名古屋市
主要用途:専用住宅
設計監理:architect6建築事務所
施工:澤崎建設株式会社
造園:景観設計ユリ
基本計画:2017年1月〜2017年5月
実施計画:2017年5月〜2017年7月
工事期間:2017年11月〜2018年7月
構造:在来木造 2階建て
建築面積:80.5m2(24.37坪)
延床面積:137.46m2(41.58坪)
写真撮影:ArchiPhoto KATO